本一覧

機器修理バイブル

「アンプ製作のノウハウ」窪田登司著日本放送出版協会 前半のノウハウ編では回路図に現れない配線方法や発振、寄生振動対策とノウハウでいっぱいです。後半では具体的な製作について書かれております。前半のノウハウについては時代を超えてすばらしいものです。

2020年05月10日

製造会社本

「音の記憶 技術と心をつなげる」パナソニック役員ジャズピアニスト小川理子著 文芸春秋社
オーディオ機器を製造する側の事情が分かりました。今まで日本の音響メーカーは、物理特性重視で、聴感、感性と言うものは二の次にしているものだと思っておりました。
ところが、それは全然違っていて、テクニクスの研究所では、音楽を再生した時の脳波、呼吸、心拍、皮膚電位、顔面温度等の生態信号を測定し、心地よい音とは何かと言うものを解明していたそうです。また、音響機器の開発及び音質評価は、測定器による「物理特性」を基本とし、その上に、人間による「感性評価」を重視していたそうです。
映像であれば、アナログテレビからハイビジョンへ、ハイビジョンから4k、8kへと、その精細度の進歩は誰が見ても一目瞭然ですが、音響の場合はアナログ盤からCD、DVDオーディオ、ハイレゾと上位規格が誕生しても「繊細になった」とか「ダイナミックになった」と言う感じが、個人により全く違うので研究開発は難しいそうです。
本書の著者は、テクニクス復活の責任者に抜擢される訳ですが、感性重視型の製品づくりをキーワードとしたそうです。「原音再生」へのこだわりは勿論、「音による感動」を最先端のデジタル技術で実現すると言うことをモットーとしたそうです。
そのため、製品の「音決済」として、本人がプロトタイプの視聴を行い、「ここのテナーサックスの音を太くして欲しい」、「この演奏者だったらこう言う音が出るはずだ」と技術者に注文を付けたそうです。技術者も大変ですね。物理特性を向上させるのは簡単ですが、それを保ったまま、音質への要求にも答えなければなりません。(当たり前と言えばその通りですが)
と言う訳で、この本ですが、音響機器を製造、販売する側の事情や苦労が理解でき、とても面白いものでした。また、会社員とプロのジャズピアニストを兼務できる寛容さがパナソニックにあり、(プロのジャズピアニストだからこそできる音質評価は勿論重要ですが)素晴らしいと思いました。名古屋に演奏で来られるときは、是非聴きに行きたいと思いました。

2020年09月13日

子供の科学

創刊が大正13年(1924年)で現在も刊行され続けている雑誌です。(創刊100年おめでとうございます。)小中学生向けの雑誌であるのにもかかわらず4石スーパーラジオ、6石2バンドラジオや5球スーパーラジオの製作記事も記載してました。これ、中学生に作れるのでしょうか、大人でも手ごわいと思います。

↑ 昭和49年(1974年)の子供の科学です。この頃の子供の科学は毎号ラジオの製作記事を掲載してました。本号では5球スーパーと1石ラジオの製作記事がありました。
小学生の時買ったものではなく、ヤフオクで落札しました。半世紀もこんなものを取ってある人がいたなんて凄いです。折り目もなく新品同様で、折込の紙ヒコーキも付いてました。

↑ 本格的な5球スーパーです。当時は既にトランジスタ全盛の時代です。(とは言え、家のテレビはまだ真空管式だったかも。)そんな時でもまだ真空管用のIFT、バリコン、同調(発振)コイル、パディングコンデンサを売ってたんですね。
現在では大概のものはインターネットで買えますが、当時、これだけの部品を集めるのも大変だったのではないでしょうか。ほとんどの小中学生(特に田舎の)にとってこの記事は読み物としてのもので、製作するためのものではなかったと思います。(そんなお金もないし)

↑ 記事は、製作の仕方や調整方法等が細かく書かれています。
しかし、何度も何度も読み直しているうち妄想がどんどん膨らみ、5球スーパーが孤高の美人の様に近寄りがたい存在となり、何故か製作してはいけない神々しさを感じるようになり現在に至っております。
AM放送終了までに色々なラジオを製作してみましたが、これだけは間に合いそうもありません。当時これを見て製作した小中学生のおっさんを尊敬します。

2024年02月09日

交響曲”HIROSHIMA”

全聾の作曲家が作ったら傑作で、サラリーマン風のオッサンが作ったら凡作ってなに?って感じですね。
これは佐村河内守さんのゴーストライターである新垣隆さんの告白本です。新垣さん自体は、おかしな依頼者(佐村河内さん)からの要請を受け、作曲の仕事をしただけですから罪は少ないと思います。
なので、この本に書かれていることは真実だと思います。虚構に嘘の理由をつけても何の得もないですもんね。

↑ ブックオフの200円コーナーで購入しました。平易な文章なので一気に読めます。

佐村河内守さんは、最初、映画音楽の依頼を請け負っていて、それが新垣さんのお陰で上手く行き、その後、ゲーム音楽を請け負う事になります。
これくらいにしておけば何の問題もなかったのですが、これのオーケストラ版を引き受けてしまいます。これが、そこそこヒットし、そのブックレットには「近年、交響曲に着手」の言葉が。
新垣さんも流石に目が点になったと思います。
この時点で既に佐村河内さんは全聾と言う設定です。これは宣伝効果抜群です。それと、佐村河内さんは被爆2世(これは事実らしい)でHIROSHIMAと言う交響曲のサブタイトルに重圧感がでます。
それと本人による自伝も出版(タイトルは交響曲第1番らしい)され、交響曲が実演される下地が整っていく訳です。
こうして肥大する虚像に抗うことができず、新垣さんの曲は初演を迎えてしまいます。また、CD化の話しもメジャーレーベルからあり、ここまで来たら詐欺としか言いようがありません。
このCDをベタ褒めした、三枝成彰さんや五木寛之さんらは、お銚子者と言うことがバレて大変だったと思います。NHKもそうです。密着取材のドキュメンタリー制作時に「お前、聞こえるじゃねーか」と思ったはずです。これをそのまま放送するなんて、受信料返せ!って感じです。
要は、音楽の正当な評価に関係なく、ストーリーだけで評価や売り上げが雲泥の差となる訳です。資本主義って恐ろしいですね。(このCD、クラシックとしては異例の1万枚以上を売り上げたらしい)

↑ LP盤も中古レコード屋でよく見かけます。これはブックオフのCDで購入しました。

新垣さん自身は、この交響曲を、ゲーム音楽と言ってます。芸術作品ではなく、既存の楽曲の二番煎じと言うことでしょうか。大河ドラマのタイトル曲みたいなもの、とも言ってます。(なんと謙虚な人、感動します)本当の音楽家なんて、こんな感じなんでしょうね。
そう考えると、このCDも安心して聴くことができます。

2024年06月09日