電蓄の回路設計と製作
オーディオの原点と言うべき本です。
元々はラジオ技術と言う雑誌の臨時増刊号第14集で、発行は1957年(昭和32年)ですが、2000年代に完全版で復刻されました。1957年と言えば、ジャズやクラシックの名盤や名録音が数多く、オーディオの黎明期とも言える時代でしょうか。

勿論、当時の製作記事は面白いのですが、今から見ると古めかしさは否めません。
しかし、オーディオに対する考え方は現在と同じで凄く面白いのです。当時はHiFi機器は無く、これから電蓄がどんどんHiFiになって行こうとする時代です。現在、HiFiなどいたるところにある時代ですが、理想とすることが同じなので、これらの古めかしい本を読んでも勉強になります。
特に北野進先生の「音を良くするための7か条」では、第1条で、「周波数特性偏重主義に落入るな」、第2条では「過渡特性を重視すること」、と第7条まで続きます。当時の機器は周波数特性も歪率もまだまだの時代だったのですが、それでも過渡特性を第2に持ってきたと言うのは、現代でも全く同じと言えるのではないでしょうか。
HiFiに関する12章

そんな中で特に面白いのがコラム記事の「HiFiに関する12章」です。↑上はその第1章なのですが、「HiFiとは原音を聴いた時の感覚になるべく近い感覚をよび起こすこと」とあります。日本ではその後、「原音そのものを忠実に再生するのがHiFiの理想」みたいな空気になって、感覚で勝負した米製品やヨーロッパ製品(レコードも含む。)に負けていたと思います。(オーディオの視聴では視覚情報がないので、レコード再生では、原音よりももっと派手な音にしようと言うのがアメリカ製品ですもんね。)
第2章以下では周波数帯域と聴き心地の関係(周波数帯域は広ければ広い方が良い訳ではない。)や周波数帯域と歪率と聴き心地の関係(歪率は低ければ低い方が良い訳ではない。)等、今見ても新しい発見が続々と出てきます。(ここのところが単行本になっていたら購入したいと思います。)