フルレンジスピーカー

居間に置くスピーカーを選ぶのは、結構骨の折れる仕事です。自分の部屋にはJBL4331Aを置いていますが、こんな大型(1970年代後期から80年代前期には中型と言われておりましたが。)を置いた日には家族から総スカンを食らうこと間違いなしです。したがって、居間には小型スピーカー(現代基準では大型?)を使用しています。また、居間ですからテレビのスピーカーとしての役割も必須です。この頃のテレビの内蔵スピーカーの音は貧弱で、ベースは一切聞こえませんし、シンバルだって鈴の音に聞こえます。テレビのどこが鳴っているのかさえ分かりません。
少し前までは、三菱ダイヤトーンのSC-160(銘フルレンジスピーカーP610の標準箱)にコーラルのフルレンジスピーカーFLAT6Ⅱを入れ替えて使用しておりましたが、30年も使うと、もう寿命です。これは新調するしかありません。(勿論P610はとっくにお釈迦様になられました。)

コーラルFLAT6Ⅱ

音質も特性も三菱のフルレンジスピーカーP610よりも良いものです。第2世代のフルレンジ?

三菱SC-160(P610標準箱)の写真を探したのですが、箱の裏しかありませんでした。

(1959年10月9日製です。銘板の写真はありました。)

 

フルレンジスピーカーの音質

フルレンジスピーカーは良い音がします。このコーラルFLAT6Ⅱなんかは、他のスピーカーと聴き比べなければ何の不満もありませんでした。高域から低域まで出ているし、(三菱の標準箱SC-160で、バスドラが本当にリアル鳴っており、その当時には38cmウーハーなんか使うやつはバカだと思ってました。→その後、社会人になり38cmウーハーの凄さを知り戻れなくなる。)定位は良好、能率は良い、価格が安いと良いこと尽くめです。今考えるとその音は、盆栽か箱庭的感覚でしょうか。それだけ眺めていれば、壮大な庭園に居るような感覚になります。市販の2ウェイ、3ウェイとは一寸違った音の良さがありました。今でも某オークションで、三菱のP610が高価で取引されているのも分かります。
しかし、今の時代、中古品のP610如きに大枚はたいてはいけません。もっと安くて良いフルレンジスピーカーが沢山あります。と言う訳で、次の条件でスピーカーユニットを選びました。

①口径は、16センチか20センチ
 言わずと知れた最も周波数バランスの良い口径です。12センチではベースが弱く、25センチではシンバルが弱くなります。
②軽いコーンで高能率
 軽快な音を出すためには軽いコーンでなくてはいけません。レコードに針を落とす時の音が”ボコン”ではなく”コン”って言う軽快なものでないと真空管アンプにマッチした弾んでかつしっとりとした音になりません。高能率スピーカーは箱を大きくする必要がありますが、それには目をつむります。
③安価
 とは言うものの、良いものは結構します。1万円程度が良いのですが。(箱も別に必要ですから価格は低く抑えないといけません。)
④その他の特性
 その他の特性に拘り過ぎてはいけません。スピーカーは電気回路と違い理論どおりには行きません。

実はフルレンジスピーカーと真空管アンプはもの凄く相性が良いのです。2A3のシングルアンプで鳴らす50年代のジャズなんかは最高です。こう書くと50年代のジャズなんて元々周波数レンジも狭く歪みも多いから、そんな感じの音でしょ、と思われるかも知れませんが、全然違います。文字どおり最高なんです。(聴かなきゃ分からない。)

ところでエンクロージャーも併せて考えなければいけませんが、そこは木工製品ですから気軽に考えましょう。自分がかっこいいと思える大きさがマッチした大きさです。極端にしなければ音がすごく悪くなることはありません。ポートのチューニングも低すぎれば密閉になるし高いとブーミーになりますから60、70Hzあたりにしておいてダメならポートにフェルトでもつっこみましょう。

セレッション FTX0820

良いもの見つけました。イギリスのメーカーセレッションのFTX0820です。

ダイキャストフレームで、磁石も大きく、能率は94dBと良い感じです。天辺にツイーターの端子があります。

ただ一つ引っかかるのは、同軸型スピーカーと言うことです。
散々「フルレンジは最高」と言いましたが、厳密には2ウェイです。でも同軸ですからフルレンジと言って良いのではないでしょうか。これで値段が1万6千円なら安い。ちなみにツイーターは、ウーハーの奥に内蔵されています。ホーン型でホーンは短く推奨クロスオーバーは2kHzです。

箱(エンクロージャー)

初めのうちは三菱のSC-160を復活させようと思ってましたが、口径が16cmから20cmに変わりましたので、新しく製作することにしました。しかし、これが意外と難儀で、結局購入することになりました。とは言っても、メーカー製では規格の決まった既製品色が強く、自作品と言えなくなってしまいそうです。ネットで探すと良いものが見つかりました。B.P.CRAFT宮西さんの「ウルトラバス・エンクロージャー」です。マルチダクトの箱で、55リットルの米松合板製の頑丈なもので、自作感満載です。工作精度も高く安価で一生使えそうです。

ウルトラバス・エンクロージャー

なかなか立派です。自作ではここまでの精度がでません。

バッフル板を外すと中身はこんな感じです。

ウォルナットの突板を貼ろうとも思いましたが、木目があまりにも立派なのでワトコオイルのみでで仕上げました。ニスも塗ってません。うーん、なかなか良い風合いです。

ネットワーク

ネットワークを製作します。回路はスピーカーの取扱説明書で指示されてますので、そのまま使用しました。コイルのインダクタンスの端数は巻き戻してあります。右側のスイッチは、入力をそのままダイレクトにウーハーに入れるための切り替えです。その場合、ツイーターは使用しません。SP盤の再生にはツイーターを切ってウーハーのみにします。

 

完成

エンクロージャーのバッフルに自在錐で穴開けします。塗装は黒にしました。保護用ネットはスピーカー用ジャージーネットが市販されてます。

 

ウーハーダイレクトスイッチの操作は、右下のダクトから棒を突っ込み行います。
そのままだとダクトのチューニング周波数が高過ぎるので、6個のポートの内2個は段ボールで塞いでいます。ベースが強調される感があったのですが、ナチュラルな感じになりました。(この頃のJポップ等は、小さいスピーカーで聴く前提で音作りがされているので、100ヘルツ前後にチューニング周波数があると、強調に強調を重ねブーミーに聴こえてしまいます。)

音質

狙いどおり音質です。セレッションはイギリスのメーカーですが、アルテックをミニにした感じです。軽快な音で、2A3シングルアンプにピッタリです。

この様なスピーカーは、メインスピーカー(我家で言うとJBL4331A)と同じ部屋に置いてはいけません。他と比べなければ完璧な音質ですから。これが2ウェイ、3ウェイとなると何らかの不満が発生するものですが、フルレンジスピーカーの場合は不満なく長く使えます。
もしも今、フルレンジスピーカーに不満があり、買い替えようと思っている人がいましたら、今持っているものを捨てないでとっておきましょう。将来、また聴いてみたくなる日がくるかもしれません。

 

38cmウーハーの低音

昔は、16cmでもこれだけの低音が出るのに38cmウーハーなんて要らない、どれだけブンブン言わせたら気が済むの、と思っていましたが、一度38cmウーハーを使用し、中毒になりました。実は38cmウーハーってブンブン言わないんです。ブンブン言うのは小さいスピーカーで低音を出そうとするためにブーミーになったり、箱なきの状態であることが多いのです。テレビの別売りスーパーウーハーなんてその典型的な例です。ただブンブン言うだけで音程なんてありません。低音が自然に出る38cmウーハーの威力は凄いです。
世の中には45cmウーハーや38cmウーハーを並列して使用している強者が結構いますが、そこまで行くと病気です。なるべく病気をうつされないようにしなければいけません。低音がそこまで濃くなると中高音も併せて濃くする必要があり、システム全体を見直す羽目になるからです。(38cmウーハーについても組み合わせるツイーターは、やはり音の濃いホーン型が一番です。コーンやドーム型なんかは、音が薄すぎて使えません。)