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モーニングコーヒーはいかがですか

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扉ひとつで、空気はまったく違うものになる。エレベーターに乗り込んだ階では、どこか血の匂いがする生々しいエネルギーが充満していた。

 この階は、大きな窓にゆったりとしたスペースで観葉植物が幅を利かす。なにより静か。しかし空気は、どこかよそよそしい。

 岡の上に建つ愛知病院の最上階からなら、岡崎城さえ見下ろせる。

「あら、山内さん、今日からひとりなの」

 渉がエレベーターを出ると、受付カウンターから後藤秋絵のやわらかい声が聞こえてきた。「これからは、よろしくね」

「よろしくお願いします」

 渉は小さく頭を下げて待合室に向かった。先輩の渡辺から、あの階では言葉に気をつけろ、と言われている。

コーヒー・マシーンを洗っている渉を見て「新人さんだね。いつも美味しいコーヒーをありがとう」関川洋平が笑いながら話しかけてきた。「朝のコーヒーが楽しみなんですよ」 

〜つづく